大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)8969号 判決
【主文】
一 被告株式会社マグジャンは、別紙目録記載の自動麻雀台を製造し、譲渡し、貸し渡してはならない。
二 被告株式会社マグジャンは前項の自動麻雀台を廃棄しなければならない。
三 被告株式会社マグジャン、同岩崎行雄は、原告傍島岩蔵に対し、各自金一七九万二五〇〇円及びこれに対する昭和五七年一二月五日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告傍島岩蔵のその余の請求及び原告オー・エス・プロジェクト株式会社の請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用は、原告オー・エス・プロジェクト株式会社と被告両名との間においては、被告各人に生じた費用の各二分の一を原告オー・エス・プロ・シェクト株式会社の負担とし、その余は各人の負担とし、原告傍島岩蔵と被告両名との間においては全部被告両名の負担とする。
六 この判決は、主文第一ないし第三項にかぎり仮に執行することができる。
【事実】
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 主文第一、二項と同旨。
2 被告両名は、各自、原告傍島岩蔵に対し、金一二五〇万円、同オー・エス・プロジェクト株式会社に対し、金三七五〇万円及び右各金員に対する昭和五七年一二月五日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告両名の負担とする。
4 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告両名の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告両名の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1(一) 原告傍島岩蔵(以下「原告傍島」と略す)は次の出願公告にかかる権利(以下これを「本件仮保護の権利」といい、その発明を「本件発明」という)を有している。
発明の名称 麻雀牌の整列装置
出願 昭和五三年八月四日(特願昭五三―九五六〇八)
公告 昭和五七年一月五日(特公昭五七―七四)
特許法六四条による出願公告後の手続
補正 昭和五七年一〇月四日
特許請求の範囲
「1麻雀牌が二列に並んで押出される誘導路に、その並んだ二列の麻雀牌の最後部を同時に押圧して該誘導路内の移動せしめる手段を備えるとともに、前記誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置したことを特徴とする麻雀牌の整列装置。
2、3省略」
(二) 原告オー・エス・プロジエクト株式会社(以下「原告会社」と略す)は右権利の専用実施権者もしくは独占的通常実施権者であり、侵害者に対し損害賠償請求権を有する。
仮にそうでないとしても原告傍島と原告会社とはその実質において同一であるから、原告会社は侵害者の得た利益について損害賠償請求権がある(大阪地方裁判所昭和五四年二月二八日判決特許ニュース五一四五、五一四六号)。即ち、原告会社の本店と原告傍島の住所とは同一であり、その取締役は原告傍島とその妻傍島清子と訴外岡田勉(非常勤)であり、監査役は野村宗三郎(非常勤)である。そして従業員は一三名、資本金は五一〇万円であり、株式の譲渡についても制限が設けられているからその実質は原告傍島の個人経営に等しいものである。
2 本件発明の構成要件及び作用効果は次のとおりである。
(一) 構成要件
(イ) 麻雀牌が二列に並んで押出される誘導路に、その並んだ二列の麻雀牌の最後部を同時に押圧して該誘導路内を移動せしめる手段を備える。
(ロ)(Ⅰ) 前記誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、
(Ⅱ) この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、
(ハ) この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取って麻雀卓の天板上に持ち上げる受板を配置した。
(ニ) 麻雀牌の整列装置。
(二) 作用効果
(イ) 牌を一七幢の壁に並べる作業が自動的に能率よく行うことができる。
(ロ) 無端状のベルトで牌を押出す構造であるので、全体を小型化することができる。
(ハ) 麻雀卓内への組込みが容易に行える。
3 被告株式会社マグジャン(以下「被告会社」と略す)は、昭和五七年三月初め頃から別紙目録記載の自動麻雀台(以下「被告製品」という)を業として製造し、譲渡し、貸し渡している。
4 被告製品の構成及び作用効果は次のとおりである。
(一) 構成
(イ)' 二列に並んで押出される麻雀牌の誘導路10と一列に並んで押出される麻雀牌の誘導路10Aからなり、
(ロ)' 無端ベルト7(無端走行体)及び之に取付けられた押出部材30により二列の麻雀牌Aの最後部を同時に押圧して誘導路10内を移動せしめる手段を備え、
(ハ)' 右の誘導路10は麻雀牌の供給端から順に二列の麻雀牌A群を移動させる部分10l(一列誘導路10Aと共通の側板6と6aとを有し、6aに接する牌A1と共に牌A1・A2・A3と三つ並んで移送され、牌A2・A3が側板6と6との対応間隔に入つて移送される)と、誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分10m(まつすぐに延びて牌A3を移送させる案内レール14と、下方へ傾斜して牌A2を下方へ牌A2の厚み分だけ下降させる案内レール15を有し)と、
(ニ)' この部分より先端側の位置に、上下差が生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分10n(レール14上を摺動してきた牌A3を内側へ移動させるガイド16と、レール15上を摺動してきた牌A2を内側へ移動させるガイド18を有し)を有し、
(ホ)' 右10nを過ぎて牌A2・A3は上下に積重なり、之を受取つて天板上に持上げる受板4を有する。
(ヘ)' 自動麻雀台。
(二) 作用効果
被告製品は右の構成を採ることによつて前記2(二)記載の本件発明と同一の作用効果を奏する。
5 被告製品の構成と本件発明の構成要件とを対比すると、構成(イ)'は構成要件(イ)前段を充足する。前者は右のほか、一列に並んで押出される誘導路10Aを有しているが、これは本件発明に付加されたものにすぎない。また構成(ロ)'、(ハ)'、(ニ)'、(ホ)'、(ヘ)'はそれぞれ構成要件(イ)後段、(ロ)(Ⅰ)、(ハ)、(ニ)を充足している。そして、被告製品は本件発明と同一の作用効果を奏するから、その技術的範囲に属する。
(6)(一) 被告岩崎行雄(以下「被告岩崎」と略す)は、被告会社の代表取締役であるが、その職務の執行にあたり、被告製品の製造、譲渡が本件発明を侵害するものであることを知り、又は過失により知らないで被告製品を製造、譲渡したのであるから、被告岩崎及び被告会社は不真正連帯して原告両名に与えた損害を賠償すべき義務がある。
(二) 被告会社は昭和五七年三月初め頃から同年八月末まで被告製品を合計一億五〇〇〇万円(二五〇台)製造、譲渡し、少なくとも一台あたり二〇万円合計五〇〇〇万円の利益を得ており、右金額が原告両名の損害金と推定される。そしてその内訳は原告傍島が実施料相当額(原告傍島は原告会社に実施料として一台につき五万円の約定で本件発明を実施許諾しており一台につき五万円が相当である)合計一二五〇万円、原告会社が残余の三七五〇万円と考えるのが相当である。
よつて、原告傍島は本件仮保護の権利に基づき、原告会社は専用実施権等に基づき(ただし損害賠償のみ)、被告会社に対し、被告製品の製造、譲渡、貸渡の差止及びその廃棄を求めると共に、被告両名に対し、各自前記各損害金及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和五七年一二月五日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。<以下、省略>
【理由】
一請求原因1(一)記載の事実(原告傍島が本件仮保護の権利を有すること)は当事者間に争いがなく、右争いのない本件発明の「特許請求の範囲」及び補正後の本件公報によれば、本件発明の構成要件は、請求原因2(一)記載のとおり分説されうるものであること及び本件発明が同2(二)記載の作用効果を奏するものであることが肯認できる(この点は、本件発明は麻雀牌を一七幢の壁に並べる整列装置に限定されると主張するほか被告両名の認めるところである)。
二被告会社が昭和五七年三月から被告製品を業として製造し、同年四月以降これを業として譲渡し、貸し渡していることは当事者間に争いがなく、被告製品を説明したものであることにつき当事者間に争いのない別紙目録の記載によれば、被告製品の構成は請求原因4(一)記載のとおり分説するのが相当である。
三そこで、以下被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かについて検討するが、被告両名は、本件発明は、麻雀牌を一七幢の壁に並べる整列装置に関するものであり、これに限定されるものであると主張するので、まずこの点についてみることとする。
1(一) <証拠>によれば、補正後の本件公報の発明の詳細な説明の中には、「この発明は、麻雀牌を、一七幢の壁に並べる整列装置に関するものである。この発明の第一の目的は、二列に並べた麻雀牌を押し出すのみで、牌が上下に重なつて卓上に一七幢の壁が形成でき、卓上への牌の整列が自動的に能率よく行える装置を提供するにある。」(二欄二七ないし三二行目)、「図示のように、麻雀卓1の天板2に、牌Aの一七幢の壁が通過できる長い開口3を、」(三欄四、五行目)、「直線部10aは、表向きで縦方向に二枚並ぶ牌A(第5図参照)が一七組並ぶ長さを有する」(三欄二八、二九行目)、「直線部10aの先端部には、この直線部10aに二列一七枚の牌Aが並ぶとこれを検出し、ベルト7が牌の押出方向に連続的に走行するようモーター9に通電するリミットスイッチLS4が設けられている。」(五欄二一ないし二五行目)、直線部10a上に順次押出されて二列一七枚の牌が並ぶと、リミットスイッチLS4がこれを検出して」(六欄三一、三二行目。補正の内容(4))、「ベルト7の走行により、押出部材30は二列一七枚の牌を押す。」(六欄三五、三六行目。補正の内容(6))、「受板4が押上げられると開口3を閉じ、第8図のように、卓上に一七幢の壁を並べることになり、」(七欄二〇、二一行目)、「以上のように、この発明の整列装置によれば、牌を一七幢の壁に並べる作業が自動的に能率よく行うことができ、」(八欄二ないし四行目)と記載され、図面第8図には一七幢の図が掲載されていることが認められる。
(二) また、<証拠>によれば、本件発明の考案者である原告傍島作成の特許異議申立に対する答弁書の中には、「(2)本願は三発明から成り、その三発明とも、麻雀牌を一七幢の壁に並べるに際し、その作用を自動的にかつ能率的に行ない得ることを目的とし、そのため、基本構成として、麻雀牌が二列に並んで押出される誘導路に形状変化をもたせるとともに、列の(「二列の」の誤記と認める)麻雀牌を押して誘導路内を移動するようにし、移動につれ変化部分でもつて二列の牌を幢状に積重ねるようにしたものである。」(一頁九ないし一六行目)と記載されていることが認められる。
(三) そして、麻雀のゲームは一三六個の牌によつてなされ、まず親、南家、西家、北家がそれぞれ一七幢の壁を作ることから始まるものであることは世上顕著な事実である。
以上のとおり、補正後の本件公報及び特許異議答弁書の中に一七幢の整列についての記載がみられ、前記のとおり麻雀遊戯は、従来、通常の手順に従えば、当初一三六個の牌を四人の遊戯者が各自の前に各自の手で一七幢の城壁を設けることより始まるものであるから、本件発明は右遊戯者が各自の前面に一七幢の城壁を整列させる手間を省いて、各自が手を下すことなく自動的に牌を二段に積み重ねて天板上に並べることを包含する技術であることは明らかであるが、本件発明の特許請求の範囲の文言中には、二列に並んだ麻雀牌の数が一七個ずつであることを限定する文言がなく、更に二列に並んだ麻雀牌の最後部を同時に押圧して誘導路内を移動せしめる手段にしても麻雀牌の個数との関係でいかなる二列の整列状態のもとでその最後部を同時に押圧して誘導路内を移動せしめるかについては何ら限定するところがない。そして本件発明の実施例を参照すれば、麻雀牌の一七幢の整列は、二列に並んだ麻雀牌の個数を検出する、特許請求の範囲の文言中に記載のないリミットスイッチLS4の動作に起因するものであつて、前認定の本件発明の作用効果は、牌を一七幢の壁以外の数の幢の壁に整列させようとする場合であつても、リミットスイッチLS4の位置をこれに合わせるだけで、ひとしく奏することができることを考えると、本件公報及び異議答弁書の中の前記の一七幢の壁に関する記載は麻雀遊戯における従来一般のルールであるまず一七幢の壁に並べる場合を実施例に引いて、これに基づいて説明したにとどまるものと認めるのが相当であり、したがつて右各記載によつて本件発明を一七幢の壁に並べる整列装置に限定したものとする被告両名の前記主張は採用できない。
2 また、被告両名は禁反言の原則からも本件発明を一七幢の壁に並べる整列装置に限定すべきであると主張するが、本件公報及び異議答弁書の記載における「一七幢の壁に並べる整列装置」など牌が一七幢に並ぶことに関する記載が前記説示のとおり本件発明を麻雀牌を一七幢の壁に並べる整列装置に限定したものではない以上、本訴における原告両名の主張をもつて前記各記載に反するものであると目することはできず、したがつて被告両名の右主張は採用することができない。
四そこで次に被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かについて考える。
1 被告製品の各構成と、本件発明の各構成要件を対比すると、構成(イ)'、(ロ)'、(ハ)'、(ニ)、(ホ)'、(ヘ)'は、構成(イ)'が構成要件(イ)前段の構成のほか「一列に並んで押出される麻雀牌の誘導路10A」を有し、構成(ハ)'が構成要件(ロ)(Ⅰ)の構成のほか、「麻雀牌の供給端から順に二列の麻雀牌A群を移動させる部分10l(一列誘導路10Aと共通の側板6と6aとを有し、6aに接する牌A1と共に牌A1A2A3と三つ並んで移送され、牌A2A3が側板6と6との対応間隔に入つて移送される)」を有しているものの、それぞれ構成要件(イ)前段、(イ)後段、(ロ)(Ⅰ)、(ロ)(Ⅱ)、(ハ)、(ニ)を充足していることは明らかである。
また、<証拠>によれば、被告製品は麻雀遊戯の当初に、人手に代わり、牌を四人の遊戯者各自の前に一一幢づつの壁に整列せしめる手段において本件発明の作用効果(イ)(ロ)(ハ)と同一の作用効果を有することが認められる(この場合、(イ)の作用効果中「一七幢」の文言が右作用効果との関係で整列幢数を限定するものでないことは前記のとおりである)。
2 被告両名は、本件発明は一七幢の壁に並べる整列装置に限定されるもので受板も四箇所のみであり、被告製品のように更に四箇所の受板をつけ加える余地はないとか、被告製品は三列の麻雀牌を押出すために全体の機構が有機的不可分に結合しており単なる付加ではないと主張する。
そして<証拠>によれば、被告製品には一列に並んで押出される牌の誘導路10A、牌の供給端から順に二列の牌A群を移動させる部分10l、誘導路10Aから一段に並んで押されてくる牌を受取つて天板上に持上げる受板4aなどが設けられており、モーターが一一個、リミットスイッチ一二個、近接スイッチ一六個、電気制御回路として八ビットのマイクロコンピューターを使用し、原告会社の製品より複雑になつていることが認められる。
しかし、本件発明は要するに牌を各自の前面に幢壁状に整列せしめる手段を解決したもので、これが一七幢の壁に並べる整列装置に限定されないことは前記説示のとおりであり、したがつて天板上の受板(開口)の数の如きは、本件発明の構成要件に含まれるものではない。また、被告製品に本件発明以外に種々の構成が付加されていることは前記認定のとおりであるが、右付加された構成に照らすと、これによつて、いわゆる配牌の段階まで自動的に完了せしめているものであることは明らかであるけれども、右配牌完了後に井圏壁として残されるべき一一幢の壁を整列せしめることについては、前示構成が付加されたことによつて、構成(イ)'ないし(ヘ)'の相互の技術的関連性が、構成要件(イ)ないし(ニ)相互のそれと異なつたものになつているとは認められず、被告製品には本件発明の技術思想がその一体性を害されることなく、そのまま採り入れられているというべきである。
したがつて、被告両名の前記主張は採用できない。
3 更に被告両名は、被告製品は本件発明と配牌の手順に相違点を有し技術思想を異にしていると主張する。
そして麻雀牌の普通の配牌の手順、本件発明の実施品(右は一七幢の壁に並べる整列装置である)における配牌の手順、被告製品における手順が被告両名主張3のとおりであることは明らかであり、実施品においては四人の遊戯者の前の城壁がそれぞれ一一幢となることはありえず、被告製品の手順は実施品のそれと異なつている。
しかし、麻雀のゲームが配牌後各遊戯者が一三牌を持ち、順次、横牌をしながら和了を競い合うものであることもまた明らかであり、実施品も被告製品も麻雀のゲーム内容そのものは同じであり、前記のように配牌の手順に差があるとしても麻雀ゲーム全体としてみればこれを基本的な差異とみることはできず、前記のように、被告製品における一一幢の整列手段において本件発明の整列手段を利用するものである以上、被告製品が本件発明の技術的範囲に入ることを否定する理由とはならない。
したがつて、被告両名の前記主張は採用できない。
4 よつて、被告製品は本件発明の技術的範囲に属する。
五損害賠償について検討する。
1 まず、原告傍島は通常受けるべき実施料相当額を請求し、右実施料は自動麻雀台一台につき五万円であると主張も、被告両名はこれを争つている。
<証拠>によれば、原告会社は原告傍島に対し実施料として一台につき五万円を支払つていることが認められるが、<証拠>によれば、原告傍島は原告会社の代表取締役であること、原告会社の製品の販売価額は五九万五〇〇〇円であり、五万円は右金額の8.4パーセントの高率にあたることが認められ、他に五万円が本件発明の通常受けるべき金銭の額であることを客観的に裏付ける資料もない本件においては右五万円をもつて直ちに本件発明の通常受けるべき金銭の額であると認めることはできない。
ところで、当裁判所に顕著な国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)によれば、実施料率は基準率×利用率×増減率×開拓率の数式により算定するものであることが認められ、右基準率は実施価値が上のもの四パーセント、中のもの三パーセント、下のもの二パーセントであり、本件では全証拠によるも本件発明の実施価値が高いとも低いとも認めるべき資料がないので右基準のうち「中」を選択して基準率を販売価格の三パーセントとするのが相当である。
次に利用率について検討するに、<証拠>によれば、被告製品は麻雀卓、上部部(本件発明に係る部分)、下部部、サイコロ部、付属品などから成り、本件発明の実施とはいえないと認められる麻雀卓、下部部、サイコロ部、付属品の価格はそれぞれ五万四〇一二円、一〇万一二六九円、二万〇五七六円、一万六八九〇円、合計一九万二七四七円で、右金額は被告製品の販売価額四七万八〇〇〇円の40.3パーセントにあたることが認められる。したがつて、被告製品の販売価格における本件発明の実施といえない部分の占める割合に鑑みると、被告製品における本件発明の利用率は少なくとも五〇パーセントを下らないものとするのが相当である。もつとも原告両名は利用率を考慮すべきではないと主張しているが、本件発明に係る部分は被告製品の一部にとどまる以上これを考慮すべきは前記国有特許権実施契約書の算定方法4利用率の記載によつても明らかである。
なお、増減率、開拓率については、本件において減ずべき特段の事情が認められないので、一〇〇パーセントとする。
そうすると本件においては実施料率は三パーセント(基準率)×五〇パーセント(利用率)×一〇〇パーセント(増減率)×一〇〇パーセント(開拓率)の算式により1.5パーセントとなり、実施料額は被告製品一台につき販売価額四七万八〇〇〇円の1.5パーセントである七一七〇円となる。そして、<証拠>によれば、被告会社が昭和五七年三月から同年八月まで製造譲渡した被告製品の数は二五〇台を下らないことが認められるから、その合計額は一七九万二五〇〇円となる。
2 また、原告会社は損害として被告会社の利益のうち、前記認定の実施料を控除した金額を請求し、右利益は被告製品につき二〇万円を下らないと主張している。
そして、<証拠>によれば、原告会社は自動麻雀台一台につき二〇万円を下らない純利益を上げていること、被告会社が被告製品を卸している都島興産株式会社は、四七万八〇〇〇円で仕入れた被告製品を六〇万円弱で第三者に販売していることが認められるものの、<証拠>に照らすと右事実から直ちに被告会社の被告製品に対する利益が二〇万円を下らないことを推認することは難しく、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
更に、原告会社は、被告会社及び都島興産株式会社は共同不法行為者であるから右都島興産株式会社の利ざや一二万二〇〇〇円に被告製品のアフターサービス料六万円を加えた一八万二〇〇〇円の利益を得た旨主張し、被告会社が都島興産株式会社に被告製品を四七万八〇〇〇円で卸し、右訴外会社が六〇万円弱で他に販売していることは前記認定のとおりであり、被告会社が被告製品の一年間のアフターサービス料として六万円を計上している(前記乙第八号証)ものの、被告会社代表者兼被告本人尋問の結果に照らすと、右差額の一二万二〇〇〇円が訴外会社の利益となつたことを認めるに足りず、また、アフターサービス料六万円が単に見積りにすぎないことを認めるに足りる証拠もなく、原告会社の主張はその前提となる事実が認められず採用できない。
そして本件全証拠によるも被告会社が昭和五七年三月から同年八月までの間に被告製品の製造譲渡につき利益を得たことを認めるに足りない。
したがつて、原告会社には損害額の立証のないことに帰し、仮に原告会社に損害賠償請求権が認められたとしても、原告会社の請求は失当であり、理由がない。
3 被告岩崎が被告会社の代表者であることは当事者間に争いがない。
右事実、<証拠>によれば、原告傍島の本件仮保護の権利は、昭和五三年八月四日に公開され、昭和五七年一月五日に公告されたこと、被告岩崎は昭和五七年三月から八月当時被告会社の代表者代表取締役であつたところ、被告製品には本件発明がそつくり利用されていることの各事実が認められ、右事実及び弁論の全趣旨によれば、被告岩崎は被告製品の製造、譲渡が本件仮保護の権利を侵害することを過失により知らなかつた事実が推認され、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
4 そうすると、被告両名は不真正連帯して、前記実施料合計額一七九万二五〇〇円を原告傍島に支払う義務がある。<以下、省略>
(潮久郎 鎌田義勝 徳永幸藏)
目録
イ号図面説明書
一 名称 自動麻雀牌台
二 図面の簡単な説明
第1図はイ号物品の正面図、第2図は同上の上面図、第3図は麻雀牌の二列誘導路と一列誘導路を複合した全誘導路の拡大斜視図、第4図は同上全誘導路の前半の上面図、第5図(イ)(ロ)(イ)(ニ)(ホ)はそれぞれ同上のイ―イ、ロ―ロ、ハ―ハ、ニ―ニ、ホ―ホ、並びにヘ―ヘ線断面図で、麻雀牌と押出部材の動きを示す図、第6図は麻雀牌の押出部材と全誘導路の麻雀牌供給端並びに周辺部の拡大斜視図、第7図(a)(b)はそれぞれ同上押出部材の背面図とC―C線断面図、第8図は麻雀牌の供給機構の拡大斜視図第9図は各誘導路から押出される牌列を受取る受板と押上腕部分の拡大正面図、第10図は牌をランダムに投入して方向を揃えるロータリー型フィーダの上面図、第11図(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)は供給機構部において牌が供給される状態を示す説明図、第12図(a)(b)(c)(d)(e)は二列誘導路から受板上へ牌を二段に重ねて押出す状態を示す説明図である。
三 図面の詳細な説明
第1図において、5は麻雀卓1の天板2の下部に位置する方形函枠の側板5aに設けられた牌整列装置で、方形函枠の四周に同形のものがあり、第2図に示す天板2の四辺内側の受板4、4aにそれぞれ牌を二段重ねにしたものと、一段にしたものを裏返しにして載せる装置である。3は受板4の開口で、57は牌投入板であり、Swは操作スイッチである。59は制御部である。
第1図、第3図、第4図と第5図において、Bは麻雀牌の全誘導路で、これは二列に並んで押出される麻雀牌の誘導路10と一列に並んで押出される麻雀牌の誘導路10Aからなつている。全誘導路Bは直線部10aと屈曲部10bと直線部10cより成り、後述無端ベルト7(無帯走行体)の外周に沿つている。そして誘導路10は麻雀牌の供給端から順に二列の麻雀牌A群を移動させる部分10lと、誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分10mと、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分10nを有する。
前記麻雀牌を二列に並べて押出す誘導路10は内側の側板6と中間の側板6との対応面間に、縦方向に並べた二枚の牌Aが嵌り合う間隔を有する。無帯ベルト7は方形函枠の側板50の両端と中途上部に設けたプーリ8、11、12に掛け渡されており、プーリ8はモータ9と連動し、ベルト7を走行させる。誘導路10は、下部基端即ち牌Aの供給端をプーリ11の下に有し、上部先端即ち牌Aの放出端をプーリ12の上に有する。前記牌Aを両側に横並びに移動させる部分10lは第5図(イ)に示すように、一列誘導路10Aと共通の側板6と6aと有し、6aに接する牌A1と共に牌A1、A2、A3と三つ並んで移送され、牌A2、A3が側板6と6との対応間隔に入つて移送される。前記10lに続いて、両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分10mは、第5図(ロ)(ハ)に示すように、まつすぐに延びて牌A3を移送させる案内レール14と、下方へ傾斜して牌A2を下方(ベルト7に対して外方)へ牌A2の厚み分だけ下降させる案内レール15を有し、この案内レール14、15の端部は、上下差の生じた両側の牌A2、A3を横動接近させて上下に重ねる部分10nの先端部に達している。この10nでは、レール14上を摺動してきた牌A3を内側へ移動させるガイド16と、レール15上を摺動してきた牌A2を内側へ移動させるガイド18を有し、10nを過ぎて牌A2、A3は上下に積重なる。17a、17b、17は牌の上下積層移動を助ける補助レールである。
第6図と第7図において、30は二列の麻雀牌Aの最後部を同時に押圧して誘導路10内を移動せしめる手段、即ち押出部材である。この押出部材30は、中途部分で折曲げられて下部基端から上部先端に折返すように形成された誘導路20、20Aの内周に沿つて設けた前記無端ベルト7(無端走行体)に取付けられ、誘導路20内へ突出した押腕32、33で両側麻雀牌Aの最後部を押し、上下差の生じた麻雀牌Aを同時に押せるように、押腕32を誘導路20に沿つて折曲り自在にしたもので、無端ベルト7(無端走行体)及びこの押出部材30により誘導路内の麻雀牌移動手段が構成されている。
前記押出部材30において、押腕33はベルト7の外周側に突出する取付片31の両脚の片方下端から一体的に固定されて横へ突出し、押腕32によつて水平状態からベルト7の外周へ向けて突出折曲り自在となり、ばね34によつて常に水平方向へ戻るごと弾性が付与されている。30aは取付片31の他方の脚の下端に設けた誘導路10A側の押出部材で、1個の固定押腕のみを有する。
第9図において、4は誘導路10から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌Aを受取つて麻雀卓の天板2上に持上げる受板である。
前記受板4は基端がヒンジ結合されて、開口3内で先端から傾斜下降し、先端下面に設けた斜面台4bには軸38に枢着されて回動する押上腕36の先端が接している。37は押上腕36の下部に一体となつた扇形回転板で、板面両側にピン37a、37bを植立し、同ピン間の上方に枢着点を有する揺動杆40を有する。39は押上げ腕36が直立して斜面台4bに接して受板4を持上げたとき同腕36を止めるストッパーで、39aは同腕36が一点鎖線に示すように倒伏したとき回転板37の側部に当るストッパーで、39bは押上腕36を直立方向へ、あるいは倒伏方向へ弾力的に付勢する引張りばねである。41は無端ベルト7より外周側へ突出させた突片で、矢印51方向へ移動して揺動杆40に当つて、揺動杆40に接するピン37aを介して押上腕36を倒して受板4を下げ、同様突片41aは矢印51と反対方向へ移動して揺動杆40に当つて、ピン37bによつて押上腕36を起立させて受板4を持上げる。
4aは誘導路10Aから一段に並んで押されてくる麻雀牌を受取つて天板上に持上げる受板で、前記押上腕36によつて受板4と同時に移動する。
第8図において、20は誘導路10、10Aの下部基端の前に麻雀牌を送る供給機構で、その牌受台22は麻雀牌を並べて嵌合する三角柱状の凹所を有し、受台22の前側部に沿つて長手方向へ移動可能に挿入された可動板25の先には受台26が設けられ、可動板25の後端は引張りばね27によつて常時内方へ引かれて、受台26の内側が受台22の外端に当接し、麻雀牌が押出され受台22上に3個並んだとき矢印52の方向へ押出される。そしてこの押出しによつて牌が3個並んだことをリミットスイッチ(図示せず)によつて検出し、前記無端ベルト7を往復走行させて押出部材30、30aで麻雀牌を誘導路10、10A内へ押込む。21は後述フィーダから表を向けて降下する麻雀牌の受部の側壁である。
第10図において、53はロータリー型フィーダで、天板2面の牌投入板57が開いて、牌群がランダムに投入されたとき、回転しつつ表裏検出筒54で牌の表裏を整え、シュート(図示せず)から前記側壁21間へ表を向けて牌を送るものであり、下面の小ローラ55によつて、牌押出し手段のレバー24の後部を叩いて同レバーを揺動させレバー前端によつて側壁21間の牌を受台22上へ送るものである。
なお第6図において、56は受台22上から誘導路10A内へ送る1個の牌のみを押す押出杆で、取付台57内を摺動するラック板58に取付けられ、そのラック部は台板57上のモーター59に連結したピニオン60と咬合する。そしてこの押出杆56は誘導路10A側部のリミットスイッチLSに11個目の麻雀牌が達したとき進退する。
特許公報昭五七―七四
特許請求の範囲
一 二列に並んで押出される麻雀牌の誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置したことを特徴とする麻雀牌の整列装置。
二 二列に並んで押出される麻雀牌の誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置し、前記した誘導路は中途部分で折曲げて下部基端から上部先端に折返すように形成し、この誘導路の内周に沿つて無端走行体を設け、前記走行体には、誘導路内に突出する押腕で両側麻雀牌の最後部を押し、上下差の生じた麻雀牌を同時に押せるようこの押腕を誘導路に沿つて折曲り自在とした押出部材を取付けたことを特徴とする麻雀牌の整列装置。
三 二列に並んで押出される麻雀牌の誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置し、前記した誘導路は中途部分で折曲げて下部基端から上部先端に折返すように形成し、この誘導路の内周に沿つて無端状走行体を設け、前記走行体には、誘導路内に突出する押腕で両側麻雀牌の最後部を押し、上下差の生じた麻雀牌を同時に押せるようこの押腕を誘導路に沿つて折曲り自在とした押出部材を取付け、更に前記誘導路の基端部に、先端が誘導路の基端に臨み、表面を一定方向に向けて落下してくる麻雀牌の下端を段部で部分的に受けてこの麻雀牌を先端側に倒して支持する受台と、前記受台上に倒れた麻雀牌を先端側に押し出す押出し手段と、前記押出し手段によつて押出された麻雀牌が二枚並ぶとこれを検出し、押出部材で二枚の麻雀牌を誘導路内に押し込むよう無端走行体を往復走行させる検出手段とを設けたことを特徴とする麻雀牌の整列装置。
発明の詳細な説明
この発明は、麻雀牌を、一七幢の壁に並べる整列装置に関するものである。
この発明の第一の目的は、二列に並べた麻雀牌を押し出すのみで、牌が上下に重なつて卓上に一七幢の壁が形成でき、卓上への牌の整列が自動的に能率よく行える装置を提供するにある。
この発明の第二の目的は、全体を小型化でき、麻雀卓内への組込みが容易に行える装置を提供するにある。
この発明の第三の目的は、押出し部分への牌の二枚一組の供給が自動的に行える装置を提供するにある。
以下この発明の実施例を、添附図面に基づいて説明する。
図示のように、麻雀卓1の天板2に、牌Aの一七幢の壁が通過できる長い開口3を、卓の各辺と平行に形成し、各開口3は長手方向の一端を天板2に枢着した受板4によつて開閉自在となつている。
前記各開口3の直下に、整列装置5が設けられている。
上記整列装置5の対設した側板6は、その対応面間に、縦方向に並べた二枚の牌Aが嵌り合う間隔が設けてあり、両側板6間の両端と中途上部にプーリを取付け、このプーリにわたつて無端ベルト7が掛け渡されている。
第1図左側のプーリ8は、側板6に取付けたモータ9と連動され、ベルト7を走行させるようになつている。
前記側板6間で、ベルト7の外周部に沿つて、牌Aの誘導路10が形成されている。
この誘導路10は、牌Aの供給端が第1図右側のプーリ11の直下に位置し、ベルト7の下部走行面に沿つて延びる直線部10aと、第1図左側プーリ8の外側を、このプーリ8と同芯状となつて曲がる屈曲部10bと、この屈曲部10bから連なつて中間プーリ12の直上に達し、牌Aを上下に重ねる積層部10cとからなつている。
直線部10aは、表向きで縦方向に二枚並ぶ牌A(第5図参照)が一七組並ぶ長さを有する。
屈曲部10bは、直線部10aから押出されてきた二列の牌をA、積層部10cへ反転させて導くためのものであつて、側板6間に設けた半円形の外板13と、牌Aの表面側を受けるよう両側板6に各々固定した案内レール14、15より成る(第1図、第6図)。
これらの案内レール14と15の端部は、積層部10cの先端部まで達している。
積層部10cの構造は第6図に示すもので、一方のレール14はまつすぐ延び、このレール14上を摺動してきた牌Aを内側へ移動させるガイド16が、前記レール14の先端上部に設けられている。
このガイド16で内側に押された牌Aを支持するため、反対側の側板6には補助レール17が取付けられている。
他方のレール15は、積層部10cに達した部分に、上方へ傾斜して牌Aの厚み分だけ上昇する部分を形成している。
このレール15の先端部において、レール15上を摺動してきた牌Aを内側へ移動させるガイド18が、側板6へ取付けられている。
積層部10cを二列に並んで通過する牌Aは、両案内レール14と15の先端部において、上下に積重なつて出て行くことになる。
前記誘導路10における直線部10aの供給端には、フィーダ(図示省略)から排出される牌を二枚づつ縦に並べて供給端に送る供給機構20が設けられている。
前記供給機構20の受台22は、フイーダから排出される牌が落込む基端の両側に側壁21を立設し、その先端寄りの側縁が直線部10aの端部に臨むように配置してある。
受台22の基端には、落下してきた牌Aの下端面を部分的に受け、この牌Aを表面が上向きとなつて前方位置に倒れるようにする段部23が設けられている。
受台22の後方には、倒れた牌Aを前方へ一定ストロークを押出す押出し手段24が設けられている。
受台22の先端側に押出された牌が縦に二枚並ぶとこれを検出するため、受台22の側面に沿わせた可動板25の先端に牌の受板26を取付け、可動板25にはばね27で常時後方へ復帰する方向の弾性を付与している。
可動板25の側面にカム28を取付け、牌Aが受板26を介して可動板25を前方へ押すと、カム29がリミットスイッチLS1及びLS2を押すようになつている。
可動板25の基端には、前方に向けて移動したとき段部23の直上に突出し、受台22に次の牌が落込むのを防ぐ阻止部材29が取付けられている。
一方のリミットスイッチLS1は、カム28で押されると、ベルト7が牌Aの押出し方向に走行するようモータ9に通電し、他方のリミットスイッチLS2は受台26上から牌が押出されて可動板25が復帰し、カム28での押圧が開放されるとベルト7が逆方向に走行するようモータに通電するようになつている。
前記したベルト7には、受台22の先端に押出されて並んだ二枚の牌を同時に押すための押出部材30が取付けられている。この押出部材30は、ベルト7の外周側に突出する取付片31と、この取付片31の先端に、両側へ突出するよう設けた押腕32と33からなつている。
一方の押腕32は水平状態からベルト7の外周へ向けて突出する折曲り自在とし、この押腕32はばね34によつて常に水平方向に戻る弾性が付与されている。
押出部材30が受台22よりも第1図右側の退動位置にあるとき、モータ9退動方向への回転を停止させるリミットスイッチLS3を押すようになつている。
このスイッチLS3と前記二つのスイッチLS1及びLS2によつて、受台22の先端に二枚の牌が押出されて並ぶごとに、ベルト7は往復走行し、押腕32、33で牌を直線部10aに押出すことになる。
直線部10aの先端部には、この直線部10aに二列17枚の牌Aが並ぶとこれを検出し、ベルト7が牌の押出方向に連続的に走行するようモータ9に通電するリミットスイッチLS4が設けられている、
前記した積層部10cの先端には、リミットスイッチLS5が設けられ、このスイッチに積層部10cを通過した押出部材30の押腕33が当接すると、ベルト7が復帰方向に走行するようモータ9に通電するようになつている。
また、前記した受板4の開閉は、ベルト7の走行を利用して行うようにしてある。
受板4はばね35で常時先端が下る方向の弾性が与えられている、受板4の直下位置には、整列装置5の側板6間に取付けた押上腕36が設けられている。押上腕36は基端の円板部37が側板6で支持した軸38で回動自在に取付けられ、上部のストッパー39に当接して押上腕36が起立するとき、先端で受板4を押上げている。
円板部37には切欠40を設け、ベルト7が牌の押出方向に走行すると、このベルト7に固定した軸体41が切欠40に嵌合して押上腕36を第1図一点鎖線の如く倒す。押上げが開放された受板4は先端下りに傾斜し、その先端が積が層部、10cの下側案内レール14の端部に臨むようになる。
また、ベルト7が復帰方向に走行すると、軸体41が切欠40に嵌合し、押上腕36を第1図実線の状態に回動させて受板4を押上げることになる。
なお、供給機構20の受台22上に牌を落下排出するフィーダは、シュート内ヘランダムに投入された牌を混ぜ、方向を一定に揃えて受台22へ供給するようになつており、方向を揃えるのは、光電管により表裏を検出したり、図示するように牌の裏面両側を面取状にして、形状の違いで表裏を検出するものである。
この発明の整列装置は、以上の構成であつて、次にその作用を説明する。
先ず、フィダーから落下した牌Aは、第4図に示すように、段部23の作用で受台22上に表面が上向きとなるように倒れる。
牌Aの落下ごとに押出し手段24が進退動して牌Aを受台22の先端に押し、二枚の牌が並ぶと、リミットスイッチLS1でモータ9を起動し、ベルト7を第1図時計方向に走行させて押出部材30で二枚の牌Aを誘導路10の直線部10aに押出す。
受台22上から牌が抜出ると、リミットスイッチLS2がモータ9を逆転させ、ベルト7を第1図反時計方向に走行させ、押出部材30が戻つてリミットスイッチLS3を押すとモータ9は停止し、受台22上に二枚の牌が並ぶごとにこれを繰返す。
直線部10c上に順次押出されて二列17枚の牌が並ぶと、リミットスイッチLS4がこれを検出してモータ9を回転させ、ベルト7を第1図反時計方向へ連続的に走行させる。
ベルト7の走行により、押出部材10は二列一七枚の牌を押す。押された牌は直線部10aから屈曲部10bを通つて積層部10cへと進む。二列の牌は屈曲部10bで反転して表面が下向きとなり、第9図イの如く案内レール14と15で各々支持される。
ベルト7の走行によつて押上腕36が倒れ、受板4は先端が案内レール14の端部に臨むように傾斜している。
積層部10cを通過する二列の牌は、第9図ロ及びハに示す如く、案内レール14と15によつて上下に差を生じ、案内レール15上の牌は厚み分だけ上昇する。
次に、両側の牌Aは、ガイド16と18によつて互に内方へ押され、第9図ニの状態から同図ホのように上下に重なり状となる。
上下に重なり状となつた牌は、第7図のように傾斜する受板4上へ押出されて行く。
このとき押出部材30の押腕32は案内レール15に沿つて折曲がり、上下差の生じた両側の牌を確実に押出すことになる。
牌Aが積層部10cを通過して受板4上へ完全にのり移ると、押腕33がリミットスイッチLS5を押し、モータ9は逆転してベルト7は第1図反時計方向に走行する。
ベルト7の走行途中で押上腕36が起立し、受板4を押上げた後、押出部材30が退動位置に戻り、リミットスイッチLS3を押してモータ9は停止する。
受板4が押上げられると開口3を閉じ、第8図のように、卓上に一七幢の壁を並べることになり、四個所の各開口部分に設けた整列装置が前記のような動作を行い、卓上に一七幢の壁が四角います形に並べられることになる。
以上のように、この発明の整列装置によれば、牌を17幢の壁に並べる作業が自動的に能率よく行うことができ、しかも無端状のベルトで牌を押出す構造であるので、全体を小型化することができ、麻雀卓内への組込みが容易に行えるなどの優れた効果をあげることができる。
図面の簡単な説明
第1図はこの発明の整列装置を示す縦断面図、第2図は同平面図、第3図は同上における牌供給部分の拡大平面図、第4図は同じく供給部分の縦断面図、第5図は供給部分の斜視図、第6図は誘導路の積層部を示す斜視図、第7図は整列直前の卓上の状態を示す斜視図、第8図は整列状態の卓上を示す斜視図、第9図は誘導路による牌の積重ね順序を示す断面図である。
一……雀卓、二……天板、三……開口、四……受板、五……整列装置、七……ベルト、九……モータ、一〇……誘導路、一四、一五……案内レール、一六、一八……ガイド、二〇……供給機構、二二……受台、二三……段部、二四……押出手段、三〇……押出部材、三二、三三……押腕、三六……押上腕。
補正の内容
(1) 本願の「特許請求の範囲」を別紙のとおり補正する。
(2) 明細書第七項第一九行(公告公報第四欄第三三行)の「ム29が」を「ム28が」に補正すふ。
(3) 同書第八頁第八行(同公報第四欄第四二行)の「受台26」を「受台22」に補正する。
(4) 同書第一二頁第三行(同公報第六欄第三一行)の「直線部10cを「直線部10a」に補正する。
(5) 同書第一二頁第五行乃至第六行(同公報第六欄第三三行乃至第三四行)の「第1図反時計方向」を「第1図時計方向」に補正する。
(6) 同書第一二頁第七行(同公報第六欄三五行)の「押出部材10」を「押出部材30」に補正する。
特許請求の範囲
(1) 麻雀牌が二列に並んで押出される誘導路に、その並んだ二列の麻雀牌の最後部を同時に押圧して該誘導路内を移動せしめる手段を備えるとともに、前記誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置したことを特徴とする麻雀牌の整列装置。
(2) 麻雀牌が二列に並んで押出される誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置し、前記した誘導路は中途部分で折曲げて下部基端から上部先端に折返すように形成し、この誘導路の内周に沿つて無端走行体を設け、前記走行体には、誘導路内に突出する押腕で両側麻雀牌の最後部を押し、上下差の生じた麻雀牌を同時に押せるようにこの押腕を誘導路に沿つて折曲り自在とした押出部材を取付けて、前記無端走行体及び押出部材により誘導路内の麻雀牌移動手段を構成したことを特徴とする麻雀牌の整列装置。
(3) 麻雀牌が二列に並んで押出される誘導路に、この誘導路に沿つて移動する両側の麻雀牌に上下の高低差を与える部分と、この部分よりも先端側の位置に、上下差の生じた両側の麻雀牌を横動接近させて上下に重ねる部分とを設け、この誘導路の先端部前方に、誘導路から二段に重なつて押出されてくる麻雀牌を受取つて麻雀卓の天板上に持上げる受板を配置し、前記した誘導路は中途部分で折曲げて下部基端から上部先端に折返すように形成し、この誘導路の内周に沿つて無端状走行体を設け、前記走行体には、誘導路内に突出する押腕で両側麻雀牌の最後部を押し、上下差の生じた麻雀牌を同時に押せるようこの押腕を誘導路に沿つて折曲り自在とした押出部材を取付けて、前記無端走行体及び押出部材により誘導路内の麻雀牌移動手段を構成し、更に前記誘導路の基端部に、先端の誘導路の基端に臨み、表面を一定方向に向けて落下してくる麻雀牌の下端を段部で部分的に受けてこの麻雀牌を先端側に倒して支持する受台と、前記受台上に倒れた麻雀牌を先端側に押出す押出し手段と、前記押出し手段によつて押出された麻雀牌が二枚並ぶとこれを検出し、押出部材で二枚の麻雀牌を誘導路内に押し込むよう無端走行を往復走行させる検出手段とを設けたことを特徴とする麻雀牌の整列装置。